街の上の雲 ― 2016/06/02 20:38
午前の診療を終え、昼食の後、5月分診療報酬請求書類の点検を済ませる。
これで明日からの学会で心おきなく勉強できるってもんです。
さて5時から、歯科治療。
前回は麻酔が効かなくて効かなくて・・
今度は何か安定剤を飲んできてくれませんか。
いや必ずというわけじゃないんですが、だいぶ効きがよくなる人がいますから。
そう言われて、エチゾラムを少し多めに1mg、1時間前に服用。
何やらホワホワと歯科までの銀座中央通りを歩む。
今日は雲がきれいだ。
麻酔の量が、前回の1/5で済んだ。
麻酔が効かないと治療時間も長引くので前回は予定時間を超過してしまったが、今回は早めに済んだ。
麻酔の量が多いと、消えるのも遅いので、前回は夜遅くに食事をしても口から食物が洩れそうになったが、今回は2時間もすれば違和感なく食べられた。
夏野菜の冷鉢。カボチャは揚げて、トウモロコシは茹でて、その他の野菜は直火で焼いて、冷たい出汁に浸してある。こういうものは、なかなか家庭ではできないからうれしい。
大羽鰯塩焼き。いわしが好き。何にしても美味しいけど、一つとるなら塩焼きか。
今日の酒は、和歌山の紀土(きっど)。遊食倶楽部で。9時からの喫煙タイムが始まる前に、そそくさと退散。早く完全禁煙にならないかな~。
いざ高松 ― 2016/06/03 22:01
朝9時半に東京駅を出発する東海道新幹線のぞみで、高松へ。
新横浜で乗車するはずのスタッフAが乗り遅れそうだといってひと騒ぎあった。
遅れたわけ。昼飯の前菜用に、千葉の患者さんから到来のソラマメを茹でていた。
そう。当院、みんな食いしん坊である。そのくせみんな少食なんだが。
京都駅過ぎるあたりで、早めの昼食。
神戸屋でサンドイッチを一人1パック、長谷川酒店でヨナヨナエールを一人一本。
これは、スタッフからオイラへの指令である。
ちゃんとカップ持ってくるし。
根性入っている。缶から直呑みなんかしないんだもん。
日本中けっこう行っている方だと思うが、高松は初めて。
駅に着いて、駅前のシンボルタワーの最上階でコーヒー一杯。
この景色には、ノックアウトされた。
港のある街っていい。
おまけに目の前の瀬戸内海が、何か物語りの世界の入り口のようだ。
いつまでも見ていたくなる。
遊びに来たわけじゃない。
日本東洋医学会学術総会。
午後3時過ぎから6時まで、ちゃんと勉強しましたよ。
近世から現代までの日本の漢方の歴史を俯瞰し、現代の我々の立ち位置を再確認するような、シンポジウム。
その淵源の部分では、インドからの仏教医学の影響が入っていることが指摘された。
現代の部分では、様々な流派の対立を、各流派の中心人物の子供の世代が乗り越えようとして結束したことが、今につながっていることが示された。
いいシンポジウムだった。
夜は、予約してあった店で、コース料理を楽しむ。
これは、鰻を、薯蕷と卵白で蒸したもの。
鰻のしつこさは消え、滋養を残した一品。
北寄貝と豆の焼き物。
歯ざわりのハーモニーが愉しい。
烏賊は、ネットリでもコリコリでもない、サクサクした歯ざわり。
これは初めてだな。
他に鰈、金目鯛、雲丹。
酒は、高松なら凱陣を飲め、と知り合いから言われていた。
この店の地酒は、凱陣のみ。
ただし凱陣だけで4種類あった。順番にみんな飲んだ。
これは山田錦の純米吟醸。
おっと。純米吟醸といっても、「吟醸」のソフトなイメージは無い。
「純米」の方に比重がかかった、重厚な酒質。
牛肉は、胡麻を隠し味程度に軽く使って和風にしてある。こういうものに、凱陣はまったく負けない。
ちょっと目が霞んできてますな。
KU16のKUってのは香川大学のことらしい。
香川大学で開発した米を使った純米酒。
これも、大瀬戸という新しい品種を使った純米。
他に、亀の尾を使った純米も飲んだ。
どれも非常に骨太・重厚、今どきの売れ線を狙ったものとは違う。
食べ物は、他に、甘鯛の酒焼き、鱧の落としが出て、シメの御飯は、オイラはカラスミの茶漬け。苺のシャーベットが出た。
充実したコースだよねえ。
銀座で食べたら何万円? 食べたことないから知らないけど。
ここ、食の材料も文化も豊かなところだな。
「き星」という不思議な名前の店。
琴電の線路際にある小さなワンルームマンションを改装した、という店で、ほとんど看板も出ていないので、予約して地図を頼りに行ったら、店の目の前に立ってしばらく「ない、ない」と探し回ってしまった。
構えはプアでもいい中身勝負って、讃岐うどんの店にも共通する高松の文化の特徴かもしれんなあ。香川の県民性って貯蓄性向が高いらしい。ってことは、無駄な金は払わんぞってことだもんなあ。かなり徹底しているかも。
あ、そういえば本日は、当銀座内科診療所の開院19周年の記念日。
今宵の高松ディナーは、スタッフと共に記念日を祝ったのです。
高松の長い1日はうどんに明けて ― 2016/06/04 22:00
朝6時から開けているうどん屋がある。行こうじゃないか。
一人6時過ぎに起きて、まだひとけの少ない街を歩き、7時前には店に着いた。
県庁の裏手、病院や学校などが多い静かな地区だ。
自転車やバイクに乗ってきた常連客と覚しき人たちで既に賑わっている。
うどん玉をお湯に浸して温めるのも、タンクから出汁を注ぐのも、薬味を載せるのも自分でやる、一番ベイシックなスタイル。
無駄を徹底して削ぎ落とせばこうなるってわけね。
味も無駄の無いクリアな味。店の名は、さか枝。
我が好物いなり寿司が食えるのも嬉しい。
学会場まで、朝の散歩。
そうか、菊池寛はこの街の生まれなんだね。
公園や街路樹には、クスノキが多く、緑が濃い。
みかんを街路樹にした通りもあった。
コトデンこと、琴平電鉄。
親しまれる私鉄が走る街って、良いなと思う。
玉藻公園。港に隣接した海岸にある高松城の城址公園だ。
コトデンの終点・高松築港駅に隣接している。
石垣の石組がカラフルできれいだ。
堀の水は、海水だ。
コイならぬタイがうじゃうじゃ群れて泳いでいる。
他にクロダイとかスズキとか、まるで釣り堀。
鯛に有料で餌をやるイベントが「鯛願成就」って、このユルさが微笑ましい。
なんか、怪獣に見えてきますね。
園内の植物、南国的です。
学会は9時から。
まず副作用に関する演題を集めたセッションを40分。
肝障害、肺障害、偽アルドステロン症、静脈硬化症、漢方の臨床をやっていると一番気になるこのあたりについて、非常に大事な情報やディスカッションが聴けた。
実は今回の学会で、一番効きたかったのが、これ。
もう済んじゃった。
この後11時まで、「四国が生んだ漢方医家」というワークショップを聴く。
現代につながる近代日本漢方の巨人、大塚敬節先生は四国・高知の生まれであり、奥田謙蔵先生、四国・丸亀の生まれだ。この二人を並べたセッション。特にやや地味な奥田先生がこのように採り上げられることは、画期的なことだった。奥田先生は、私からみると先生の先生の先生、つまり漢方の曾祖父ということになる。副作用のセッションと重なったために、前半を聴き損ねたのが残念だった。
これにて、いったん学会場を脱出。
コトデンに乗って三駅、この日二軒目のうどん屋へ。
11時半、店の外まで行列が伸びている。25人ほどか。
回転は速いので、待ち時間はしれている。
ここも、ベイシックなセルフサービススタイル。
いりこ出汁の香りに混じって、ふんわりとした良い小麦粉の匂いが店内に漂っていて、食欲をそそられる。
出汁の塩加減もちょうど良い。太刀魚てんぷら、でかっ。
ここは王道って感じ。上原屋本店。
うどん屋から国道を隔てて、栗林公園がある。
食後腹ごなしに、公園を散歩。
立派なクチナシだ。
山沿いを疎水が流れ、アオサギが魚を狙っている。
日本庭園って自然も模しているというか、自然そのものを理想化して表現しているというか。。
外国人が多い。中国語も、スラブ系の言語も、英語も、フランス語も聞こえてくる。
かすかに霧雨が降り始めた。
学会参加者にも3人ほど遭遇。
この時間は、学会プログラムがゆるいからね。
歩いて学会場へ戻り、2時半から午後の部スタート。
「生薬栽培の現状と問題」。
国産生薬栽培がニュースになるけれど、根本問題は何も解決していない。国産生薬の方が高くなり、輸入生薬に価格で対抗できないのだ。いくら作っても、買い手、使い手がいないのでは成立しない。国産生薬の保険薬価を別立てにするしかない、という栃本天海堂・姜さんの指摘は、説得力がある。
ワークショップ「漢方薬をサイエンスする」。
ペインクリニックの専門家が、痛みの診断と治療に関して江戸時代と今とレベルの違いは全然無い、と断言されていたのが痛快だった。サイエンスの目でみると漢方の視界が拓けることもあるし、サイエンスで難渋していることが江戸時代の文献で解決することもある。
同級生と落ち合って、今夜の夕食へ。
刺身は、炙った太刀魚、マナガツオ、金目鯛、スズキ、モンゴウイカ。
小河豚と新牛蒡の揚げだし
丸干し鰯のコンフィ
鰺の餃子 つみれの味
茄子と茗荷の漬け物
香川豚のメンチカツ ゴロン
穴子の釜焚き御飯と漬け物でシメ
この店も、地酒は凱陣。
昨夜は無かった雄町の純米があり、これが鉄壁。
長い1日だった。
歩行2万歩超。
高松を見直した ― 2016/06/05 23:35
学会最終日。
午前は、「傷寒論再々考」というシンポジウムと、「東洋医学と基礎医学との関わり」というワークショップ、どちらにしようかと迷いつつ前者を聴き始めたら、終わりまで聴いてしまった。角藤裕先生の、SNSや新しいクラウド型プレゼンソフトを用いた学習法は、なるほど新しい。漢方の学習法も進化している。深化しているかどうかはわからないが。
ここでまた学会場脱出。
聴きたかったランチョンセミナーのチケットが既に無くなっていたので、歩いていけるうどん屋へ。三軒目のさぬきうどん。
今回は、すだちおろしぶっかけ、蓮根のてんぷら、いなり寿司。
ここは、悪くはないが、まあ普通ってところ。
うどん市場兵庫町店。
うどん市場って店名が笑える。
兵庫町とクロスするこの丸亀町商店街のアーケードは、よく歩いた。
2.5㌔くらいあるのではないかな。
景観が日本離れした印象を受ける。
再開発として、よくできた中心街になっている。
紀伊國屋書店があったので入ったら、ついこんな重い本を購入してしまった。
なにも旅先で買わんでもいいのに。
午後のセッションからは、矢数芳英先生の「痛みの漢方治療~レーダーチャートを用いた6つの治療戦略」を聴く。冷えを温める、抗炎症、微小循環を改善する、水分代謝を改善する、ストレス対策、虚を補う、という6つの軸で治療戦略を考える。痛みに対するだけではなく、漢方治療での戦略の立て方の整理として、よくできている。患者の病態の整理と、薬方の方意の整理の両面で。中医学的な弁証と和漢診療的な陰陽虚実と気血水論などの良いところをうまく採り入れている。これは使える。
以上で会場を後にして空港行きのバスに乗った。
正味2日の滞在だったが、高松は思ったよりずっといい街だった。
18歳の時に遭った高松出身のクラスメートが「コーヒーに砂糖をはめると言うやろ。言わんか」と言うのを聞いて以来、高松に偏見を抱き続けていたようだ。真っ当なものが真っ当な値段で食べられ、歩き回れる道と公園があり、空も海もきれいだ。
空港からの讃岐平野の眺め。
讃岐平野には、島のように突き出した小山が点在し、灌漑用の池も多い。すぐ向こうには瀬戸内海が見え、瀬戸内海には、讃岐平野の小山のように島々が点在している。瀬戸内海は海の讃岐平野であり、讃岐平野は陸の瀬戸内海であり、両者が鏡像のように接してどちらが実像でどちらが虚像かわからないような不思議な景観を作っている。そして、その向こうには、意外に近くもう岡山県が見えている。
離陸して厚い雲を抜け、しばらく飛んで雲が切れると名古屋港の上空。
そしてすぐに駿河湾上空に達する。
富士山にもう雪は見えない。
房総半島の先端で左旋回し、千葉市上空から東京湾の海岸線に沿って羽田へ。
疲れたけど、よく勉強し、よく歩き、よく食べていい学会出張だった。
三枝じゃないてば ― 2016/06/06 22:58
栗林公園で大きなクチナシの花盛りを見て
戻ってきたらうちの庭のクチナシも。
晩秋にはこの花が赤い実になり
それが漢方に用いる生薬山梔子(さんしし)になる。
スマートフォンのGoogle日本語入力、
山梔子が出なくて三枝氏がでてきたから朝から笑えた。
来月は山梔子がテーマの漢方セミナーを準備中。
戻ってきたらうちの庭のクチナシも。
晩秋にはこの花が赤い実になり
それが漢方に用いる生薬山梔子(さんしし)になる。
スマートフォンのGoogle日本語入力、
山梔子が出なくて三枝氏がでてきたから朝から笑えた。
来月は山梔子がテーマの漢方セミナーを準備中。
午前、小田原・丹羽病院の漢方外来。
電車内で駅弁食べながら横浜へ移動し、
ホーム入居中の母親を訪問診療。
電車内で駅弁食べながら横浜へ移動し、
ホーム入居中の母親を訪問診療。
帰宅して夕暮れのはなぎさんぽジョギ。
雨に備えて重く固い防水靴で高松へ行って3日間で四万歩ほど歩いたら、
少し左の膝と股関節が痛い。
どうも左下肢の使い方がまずい。
わかっているのだが。
雨に備えて重く固い防水靴で高松へ行って3日間で四万歩ほど歩いたら、
少し左の膝と股関節が痛い。
どうも左下肢の使い方がまずい。
わかっているのだが。
夕食。
アボカドとプチトマトと胡瓜とミントとパクチーと黒胡椒燻製のサラダ(笑)
アボカドとプチトマトと胡瓜とミントとパクチーと黒胡椒燻製のサラダ(笑)
粟麩のオリーブオイル焼きレモン醤油(笑)
米茄子とジャガイモの挽肉エスニック炒め(笑)
よもぎ麩の素焼き、塩と砂糖添え(笑)
うちの晩飯はとかく(笑)系(笑)
よもぎ麩がどうみてもピーマンと、FBにてご指摘を賜る。
よもぎ麩がどうみてもピーマンと、FBにてご指摘を賜る。
最近のコメント