日本東洋医学会@名古屋2日め2017/06/03 22:29

7時に起き、8時過ぎには学会場入り。
9時からまず「本草学者丹波修治」という教育講演を聴講。
まったく知らない人だったが江戸時代における本草学の広がり、
西洋からの学問の流入と合流して明治時代の生物学の礎になっていく様。
次いで特別シンポジウム「君も達人になれる」(なんて恥ずかしいタイトル!)を
チラリと覗いた後、薬理の一般演題へ。
生薬と抗酸化活性、黄耆による腎機能改善、抑肝散によるオキシトシン分泌調整といったテーマ。ここの発表について評価判断する力量はオイラには無い。今の研究者の関心がどのあたりに向いており、どんな手法で研究が行われているのか、に興味をもって聴講。
11:00から金子幸夫会頭の会頭講演「傷寒雑病論を学ぶ:張仲景から葉天子にかけて」を聴講。名古屋での漢方の歴史を少し垣間見る。以上、午前の部終了。

12:10からはランチョンセミナーで、辨野義己さんによる「長寿菌がいのちを守る~大切な腸内細菌コントロール」という話し。この領域は、どうしたっておもしろい。講演もおもしろかったが、話しが広くて、細部をもう少し聴きたかった。本が出ているようなだから、買って読んでみよう。ちなみに、雲古の8割は水、だそうですよ。人は体内に広大な生態系を宿していて、その生態系に対して、食生活を始めとする生活習慣等によって、大きな影響を与え、それがまたその人の体調に跳ね返る、というダイナミックなシステムの中で生きている。そうしたヴィジョンは、オイラには昔からとても魅力的。

午後。シンポジウム「現代における本草学」。金兌勝さんによる、生薬の作用を、温ー冷、乾ー潤、行ー鎮の3つの軸で考える、という話しは、なるほど頭の整理になる。
笛木司さんの、宋版傷寒論の度量衡に関する考察は、1両=約14gという結論。う~む。説得力ある考察。角野めぐみさんによる生薬の煎じ方による成分変化の報告。蘇葉は、煎じ時間5分が上限。だとすれば、エキス剤、あきまへんな。

朝九時からずっとお勉強。
座ってる時間が長くて腰が痛くなってきた。
医学部の学生時代を想い出す。
ちょいと会場内散歩。
これ、ダ・ヴィンチの構想を形にしたものなんだな。
あの時代にこの大きさの像を構想した人は凄い。
ってことを見せてくれるのも、いいね!

「妊娠と漢方」のシンポジウムに参加のつもりだったが、
文字通り立錐の余地もない満員。
向かいの部屋で、耳鼻咽喉科関係の一般演題を聴く。
ふだん聴かない話しを聴くのも学会の面白さ。

午後4時から最後の二時間は特別シンポジウム
近世・現代の比較から漢方の明日を考える」。
加島雅之、木村容子、高山真、と若手の精鋭が揃った。
この人たちが、これからをリードしていくのだろう。
漢方の明日。
総合内科・プライマリ・ケア領域で漢方を生かす、
専門性が高い領域で漢方を活かし研究する、
という方向性はますます広がっていくだろう。
その時に従来の漢方の専門家がどう生きるか。
加島先生のこの問いかけは、鋭く深い。
オイラは、ぼちぼち退場を考えているから、まあいいけれど。

夜。
スタッフ二人、昔からの友人二人と合流し、祝杯。


今日は、銀座内科診療所で診療をはじめてから20年目の記念日だ。
二十年前、オイラは四十代で、まだ新しい薬の名を覚えるのに苦労せず、
体重は今より五、六㌔重く、子どもたちは小学生で米国で生活しており、
銀座にはマンションが一棟もなく、
スタバ日本一号店からは芳しいコーヒーの香りが溢れ出ており、
飲めば必ず胃が痛くなるほど強いコーヒーが出されていた。
みんなずいぶん変わった。

乾杯!

あと何年、こうしてやっていられるかな?