タフでスペクタクルな大山三ツ峰2017/09/24 22:39

朝5時半に起きて、丹沢山塊の大山三ツ峰に出かけた。
大山の北東側にあって、標高は千メートルに満たないが、
山容は急峻で変化に富み、中級向きの面白い山として知られている。
自家用車だと上り口に戻らないといけないので、今回は電車とバス。

本厚木駅7時50分発の宮ヶ瀬行きのバスに乗り、煤ヶ谷で下車。
古い寺がある集落だ。
8:30に歩き始める。
畑の端に植わった山椒の実が見事に赤い。

杉林の中を上っていく。

登山口にも、ガイドブックにも、ヤマビルに注意と書いてある。
稜線の物見峠に着くまで、1時間45分。
注意していても、ヤマビルは、気がつくと服についていたり、
靴に乗っていたり、頭に落ちてきたりする。
虫系が苦手な人は、ヒルの季節は避けたほうが賢明だろう。

物見峠から北側の稜線。
何か東南アジアの戦地を思わせる。

物見峠からの稜線は、きつい登降が続く。
樹木に覆われているから高度感こそないが、
急峻に切れ落ちた痩せ尾根あり、
ハシゴあり鎖場あり、
倒木ありザレあり、
太腿震える急登あり登山道崩壊あり。
息が整う暇が無い。
大山とその北側の稜線が、今日は雲をかぶっている。

ここからが、三ツ峰と呼ばれる山頂群。

両側切れ落ちた痩せ尾根を歩いていた。
ふと目を上げると、向こうから四つ足が現れた。
逃げ場の無い狭い一本道、ガチンコだ。
距離は10㍍足らず。
一瞬、犬かと思った。
飼い犬を連れて山を歩く人がときどきいる。
四つ足はこちらに気づいていないようだ。
犬だとしても、気づかず鉢合わせは危ない。
瞬間的な判断で、チッチッチッと舌を鳴らした。
四つ足は、横に吹っ飛んで、切れ落ちた谷筋へ逃げた。
ガラガラガラガラと大きな落石の音が響き渡った。
飼い犬じゃなかったんだ。
歩いて行って覗き込むと、
十数メートル下の急斜面に四つ足がいた。
まだ若いイノシシのようだった。
目が合って、再び四つ足は逃げた。
もっと大きな崩落音がしばらく続いた。
ヤツは死んだかもしれない。
死なないにしても、大怪我を負っていずれ死ぬかもしれない。
しかし鉢合わせしていたら、落ちて死んでいたのはこちらだったかもしれない。

65歳医師、イノシシに体当たりされ転落死。
それも悪くはない。
でも誰も見てなかったから、
真相不明の行方不明で終わるところだった。

12時20分、南峰で昼飯。

ここまで小休憩を3回いれて約4時間。
キツかった。
汗だくだ。

13時20分出発して、七沢方面へ下る。下りも当然急だ。

やがて気持ちのいい沢沿いになる。

渓流の音を聴きながら歩くのは心地よいが、足元は滑る。

苔むした岩は滑るし、濡れた丸太も滑る。
油断がならない。

やがて林道になり、トンネルを通る。

村上春樹の小説世界にしばし入り込む。

抜けるとやがて、広沢寺温泉。

午後3時になっていた。
下り1時間半というところか。
3時10分のバスにちょうど間にあった。
おかげで、温泉には入りそこねた。

まったり低山歩きとは正反対。
タフでスペクタルな低山だった。